インフラエンジニア(サーバエンジニア/ネットワークエンジニア)はなぜ楽なのか

IT業界の職種はいろいろありますが、インフラ系のエンジニア(サーバエンジニア/ネットワークエンジニア)は一般的に楽だと言われています。が、それと同時にキツいとも言われています。なぜ相反する意見に分かれているのでしょうか。



目次

インフラエンジニア(設計・構築)は「他の職種より」は楽



「他の職種より」がポイントです。IT業界内ではかなり楽な部類の仕事になります。

他の職種、プログラマやSEは「無から有を作り出す」仕事です。お客様の要望に沿った物をプログラミングして作り上げなければなりません。その為、プログラミング言語だけではなく、お客様の業務に関する業務知識も必要です。プログラムはただ動けば良いという物ではありませんので、メンテナンス性を考えて作らなければなりません。つまりお客様の業務の運用形態に合わせた最適な物を自分で考えて1から作り上げる必要があります。

対してインフラエンジニアの場合、既存の技術の組み合わせで、プログラムが動く「環境(インフラストラクチャ)」を作ります。プログラマやSEとの最大の違いは1から作るのでは無いということです。精通しておくべき技術範囲が狭いのです。

しかもある程度パターン化していますので「○○の場合は□□の設定を△△にすればよい」という手順が決まっています。どの様なサーバやネットワークもその手順の組み合わせですので、基本的に頭は使いません。ただ常に勉強をして幅広い技術に精通しておく必要はあります。それでも1から作るよりも楽です。

インフラエンジニア(保守・運用)は更に楽


IT業界で一番楽な仕事が保守・運用を担当するインフラエンジニアです。保守・運用の仕事の場合、やるべき仕事には「全て」手順書が用意されています。手順書通りに仕事をするだけです。むしろ手順書以外の事をやると怒られます。手順書通りに業務をこなすだけで考える必要が殆どありませんので、IT業界で一番楽だと言われています。

それでもお客様とエンジニアとの間に立って行う業務なので、全体を見渡すことができます。IT業界の仕事の基礎を学習するには「最適」な仕事だと言えます。ですので、他の職種を希望して入社した新卒社員も最初は保守・運用の仕事を経験させられる事が多いです。

保守・運用の業務では他の職種では味わえない「故障切り分け」という技術を身につける事が出来ます。何か問題が起きた時に故障箇所を特定する技術なのですが、これはやった人でないと身につきません。そして将来ステップアップして設計・構築を担当するインフラエンジニアになった場合やプログラマ・SEになった時に「故障切り分け」の技術を持っていると大いに役立ちます。

故障切り分けは簡単に言ってしまうと「探偵」みたいなものです。与えられた状況から問題のある箇所を「理詰め」で特定する能力になります。慣れてくると数秒で解決策が頭に思い浮かぶようになります。漫画とかにいる探偵が犯人を前にしてやるアレを日常で味わえる仕事ですので、設計や構築にステップアップしないで、あえてこの仕事を続けようとする人もいるぐらいです。保守・運用のプロフェッショナルは本当の意味でプロフェッショナルな仕事です。極めてみるのも面白いかもしれません。

給料も他業界の職種と比較して悪くはありませんし、驚くほど高給は望めませんが、仕事の内容と面白さを含めて納得できる給料は貰えるはずです。


ネットワークエンジニア始めるならネットビジョンアカデミー(NVA)

なぜインフラエンジニアはキツいと言われるのか





それでもインフラエンジニアはキツいと言われます。これにはいくつかの側面がありますが、順に挙げていきます。

勤務時間が不規則(保守・運用)

24時間365日休み無く動き続けるサーバやネットワークの保守・運用を担当しますので、24時間365日の間、休まず面倒を見続ける必要があります。夜勤もありますし、GWもお盆も正月も休みはありません。もちろんシフト制ですので、他の人と交代しながらの勤務になりますが、それでも勤務形態としては楽な部類ではないでしょう。

ですが、そういう時期はお客様の業務はお休みしている事が多いですし、サーバの稼働も減りますので、基本的に普段の日よりは問題の起きる確率は減ります。何も無いからと言ってボーッとしてて良い訳ではありませんが、それでもかなり楽な仕事だと思います。

でも、土日を確実に休みたい方にとっては楽な仕事では無いと言えるかもしれません。他の会社に行っている友人は土日休みなのに自分は平日休みだと予定が合わなくて遊びに行くのに難儀します。業務内容は楽だと思いますが、そういった意味ではキツい仕事だとも言えるでしょう。


勤務時間が不規則(設計・構築)

保守・運用だけではなく、設計・構築の仕事も勤務時間が不規則になりがちです。但し、常に不規則になるのではなく、納品時や問題発生時等の一定期間だけです。

お客様の業務が運用されている時にサーバやネットワークを止める訳にはいきませんので、納品時や問題発生時はお客様の業務がない夜間帯や土日に作業をする事になります。ですので、確実に土日休みとは言い切れない所があります。

特に問題発生時は夜間帯等に突然電話が掛かってきたりします。その為、事前に起こり得る問題を予想して、それに対応する為の手順書を作り、保守・運用の担当者に周知しておく必要があります。この手順書の網羅性によってある程度は回避できますが、それでも予想外の事は起きる物です。眠い目を擦りながら電話口で指示をしたり、場合によっては夜中にタクシーで出社なんて事もあります。

普通の会社ではまずあり得ない事ですので、常識的に考えればやはりキツい仕事なんだと思います。

お客様から怒られる

システムに問題が起きればお客様は怒ります。問題が起きた時、最初に怒られるのが保守・運用を担当しているインフラエンジニアであり、その後に怒られるのが、システムを作った設計・構築を担当したインフラエンジニアです。

特に保守・運用を担当しているインフラエンジニアは一番最初に怒られますのでキツいです。相手も社会人ですし、節度を持って怒るとは思いますが、それでも自分が作ったわけでも無いシステムについて怒られる理不尽さを我慢しながら怒られる保守・運用を担当しているインフラエンジニアは精神的にキツいです。

ですが、お客様はシステムを作るのに場合によっては数億・数十億のお金を払い、毎月の保守・運用の費用も数百・数千万払っています。高いお金を払って使えないのであれば、怒るのは当然です。保守・運用のインフラエンジニアの給料はそこから支払われています。甘んじて怒られましょう。そして何が問題で怒られているのかを正確に把握しておいて、次に活かしましょう。

普通、1度目の問題であればお客様もそこまで怒りません。想定外の事が起きる事は予想できているからです。ただ同じ問題が2度3度続くと確実に怒ります。問題が起きたら同じ問題だけは起こさない様にするのが大切です。


想定外の事が起きる(保守・運用)

24時間365日システムが動いていると想定外の事が必ず起こります。その時現場にいるとパニック状態になります。そうなった時、帰るに帰れない状況になったりします。

私が保守・運用をやっていた時に遭遇したので一番想定外だったのが、阪神淡路大震災です。その時は全国規模のネットワークの保守・運用を担当していたのですが、朝方に地震が起こり、出社したら社内はパニック状態になっていました。日本全体がパニック状態だったので仕方ありませんが、そのパニック状態は数日続きました。地震により施設がダメージを受けたと言うのもありますが、そんな状況でもシステムを稼働し続け無ければならないのです。

その他にも地下鉄サリン事件の時もパニック状態になりました。システム的に問題が出たのでなく、電車が止まって社員が出勤できないのでデータセンターには夜勤明けの数人しかおらず、業務が回らなくなりました。

他にも自衛隊の飛行機が墜落して送電線を切ってしまい、大規模停電した時もありました。あの時は即時ユーザに了解を貰ってUPSが稼働している間に独りで担当している数百台のサーバをシャットダウンさせました。復電後も1台ずつ起動して状態確認したりで徹夜だった事を覚えています。

どんなに完璧な仕事をしていたとしても想定外の事は必ず起きます。そんな時でもシステムは動き続けている必要があるのです。システムが動き続けている必要がある以上、保守・運用を担当するエンジニアも動き続ける必要があります。動き続けているのが前提ですので、他業種と比べて想定外の事象に対する影響は比べ物にならないぐらい大きいです。

まとめ

インフラエンジニアはプログラマやSEと比較して、そこまで頭を使いません。だからと言って担っている責任が軽いわけではありません。

ですので、業務内容自体はとても楽だと思いますが、責任の重さからくる業務内容はキツいです。お客様からすれば「動いていて当たり前」の物を維持し続けると言うのは、言うほど楽では無いと思います。

それでも私は楽で素晴らしい仕事だと思っています。給料は良いですし、想定外の事象に対しても臨機応変に動いて解決できた時は物凄い達成感があります。不規則な勤務時間も慣れてしまえばメリットにしか感じません。平日の空いてる時間に遊んだり買い物したりできますし、休日の仕事は楽です。夜勤の時はラッシュの電車で通勤しなくて済みますし、夜勤明けには平日の昼間から遊びに行けます。

そして何よりも素晴らしいのが「感謝される仕事」だと言うことです。お客様とエンジニアに挟まれた立場の仕事だからこそ、ちゃんと仕事をこなせば双方から感謝されます。プログラマやSEではお客様に直接感謝される事はまずありません。

やりがいもあって給料も良くて平日休み。しかも業務内容が楽なのです。普通の他業種の仕事という物差しで測ればキツい仕事だと言うのは否定しませんが、それでも楽だと言いたいです。


ネットワークエンジニア始めるならネットビジョンアカデミー(NVA)