共創という時代の流れについて

元SIerという立場から最近のバズワードである「共創」について触れておきたい。
ITコンサルがバズらせようとしてるけど、いまいちバズっていないバズワードなので、はっきり言って触れたくもない。
でも、若干転職市場にも影響が出てきているので一応触れておきます。

最初に言っておきますが、この記事は私個人の見解であって偏ってます。絶対に鵜呑みにしないで下さい。




目次


共創の背景


まず「共創」というのは何かについて概要を説明する。

顧客とSIerが「共」に「価値を創造」するのが「共創」である。今までは顧客の望むことをSIerがシステム化していたのが、顧客とSIerが共に顧客にとっての価値を創造してそれをシステム化する訳である。SIerはシステムを受注できるし、顧客は新たな価値を見いだせるので俗に言う「win-win」の関係という奴である。

2年ほど前に以下の記事を書いた。

システム内製化という時代の流れについて

今回の「共創」というのもこの流れの延長線上にある。内製化に対抗するSIerが妥協策として打ち出したのが「共創」である。顧客が自分で考えて自分でシステムを作ろうとしているのを見て、一緒に作りましょうと擦り寄った結果がこれである。

これが悪いとは言いませんよ。仕事があってナンボですし、仕事が無くなりそうなら作り出すのがビジネスマンとしての使命です。顧客が望む事をやるのですから悪いわけがありません。でも長続きはしないと思います。

本来はITコンサルタントとCTOの役目


これに尽きると思います。顧客企業に雇われたITコンサルタントや顧客企業のCTOやCIOが顧客にとっての新たな価値のあるシステムを提案すれば共創なんて物は必要ありません。

ではなぜSIerによる共創なんて仕組みが産まれたのか。それはユーザ企業にCTOやCIOが居ないからです。CTOやCIOが居て機能している企業であれば、間違いなく内製化という選択をするでしょう。

そして、それをさせなかったのがITコンサルタントです。ITコンサルタントはユーザ企業に雇われていながらも、SIer寄りなのは間違いないです。SIerがITコンサルタントだったりもするのですから。自分の仕事が無くなりそうなら顧客の妥協点を探って新しい仕組みを作り出しますよ。それがITコンサルの仕事でもあるのですから。

この構図から見るに、結局の所ユーザ企業はSIerの手の中で踊らされてるなぁ、というのが率直な感想です。

2年前は内製化は進むけど失敗してSIer以外の外部企業への外注という形で収まると予想していましたが、ここにSIerが手を打ってSIerに外注する形を作ったというところでしょう。

共創の転職市場への影響


今までの顧客とSIerの繋がり方が若干変化しただけで、転職市場自体には何も影響が無いかと思いきや、実は少しだけ求人の種類が変わってきています。2年前に予想していましたが、社内SEの求人が増加傾向にあります。そしてITコンサルタントの求人が増えてきています。ITコンサルタントの場合、普通の転職情報にはあまり出てきませんが、ITコンサルタント専門のエージェント会社の方は需要が増しているようです。

社外からCTOやCIOを雇い入れる企業というのはまだ少ないです。経営者の腹積もりは判りませんが、おそらく社内SEを雇って育てるつもりなんだと思います。社内SEが育って経営陣に入るようになってからが日本のITの新たな時代の幕開けとなるんだと思います。何年後でしょうか・・・。

まとめ

社内SEが育つまでの今後数年間は共創というSIerの延命策は機能するでしょう。
ですが自社内のエンジニアが育った瞬間に共創の仕組みは破綻して内製化が進むと思います。

そうなってからSIerはどちらの方向に舵を切るのかは少し楽しみです。