前回、フリーランスが海外で働くにあたっての懸念点を大雑把に挙げました。
→前回の記事はこちら
ITエンジニアが海外でフリーランスとして生きる道を模索する - 日本にいなければならない理由
上記記事で挙げた以下の懸念点があります。
- 顧客対応(契約関連)
- ビザ
- ネット環境
- 日本語
- 治安
- 食事
- 住居費
このうち、顧客対応以外の項目は移住する先の国によって状況が変わりますが、「顧客対応」だけは共通した問題です。まずはこの部分に対する対応策について考えます。
海外でフリーランスとして生きていく為の働き方
根本的に考え方を変える
まず最初に、海外移住を考える前に、みなさん、根本的な考え方を変えませんか?
日本でフリーランスをやっていて思うのが「企業で正社員時代にやっていた仕事と結局のところは大差無い」ということです。
企業のシステムを在宅や客先常駐で作るというのがフリーランスの皆さんの主な仕事だと思います。要するに、クライアントである企業からしてみれば雇用形態が違うだけであり、みなさんは企業の為に働いています。でもフリーランスの方が自由だ!と思うかもしれません。確かに社員と違って仕事を選んだりできますし、時間によって拘束されることはありませんし、能力がある人であれば正社員時代とは比べ物にならない報酬を得ている人も多いと思います。
でもこれってフリーランスとして本当に正しいのでしょうか?
企業の為のシステムを作って報酬を得ている以上、その企業はそのシステムであなたに支払った報酬以上の利益を得ているはずです。あなたが作った物であなたが得た以上の報酬を企業は得ているのです。であれば、あなた1人でもその報酬を受けることは可能なのでは?
・・・なんて、フリーランスになったら誰でも一度は考えますよね。実際はそんなうまくいきません。みんな諦めて企業の下請け作業員みたいな仕事をやっていると思います。でも、もう一回考え直してみませんか?という提案です。
ソフトウェア販売の現在
現在のソフトウェア販売の方法は10年前と比較して大きく変わっています。殆どのソフトウェアがオンライン販売です。みなさん、最近ソフトウェアを買う時にパソコンショップに行って買いましたか?おそらく大多数の人がオンラインストアで買ってますよね。
これはスマホアプリに限らず、PCのソフトウェアも同様です。というか、OSであるWindowsでさえもオンラインでライセンスを販売しています。もっと言えばゲームソフトもオンライン販売が主流です。PCゲームに限らず、コンシューマ機のゲームソフトでさえオンライン販売にシフトしています。スマホに関して言えばオンラインでしかソフトの購入はできません。もはやソフトウェア販売の主流はオンラインです。昔みたいにパッケージを販売していた頃とは訳が違います。
この世の中の流れが何を示しているかというと「ソフトウェア開発をするのに開発以外の人員は必要無くなってきている」ということを表しています。つまり企業ではなく個人でソフトウェアを開発し販売するのが容易であるのが現代です。
企業の「ソフトウェア内製化」によって時代は変わる
ですが、この流れの中でも、日本のIT企業はいまだに受託開発を貫いています。果たしてオーダーメイドにこだわる企業がそれほど多いのでしょうか・・・?我々フリーランスもこの流れに乗って報酬を得ている訳ですが、この牙城がいつ崩れるのか判りませんが、おそらく遠くない将来にこの受託開発文化自体が無くなると思います。そして内製化がその一因になるでしょう。
つまり、企業のソフトウェア開発は内製化によって外部に発注することは無くなっていくと思います。基幹以外のソフトウェアはクラウドで提供された外部サービスを利用し、企業独自のシステムは内製です。
そうなった時、現在のフリーランスはどうすれば良いのでしょうか?内製化を目指している企業がソフトウェア企業ではなくフリーランスに外注するはずが無いですよね。つまり、フリーランスのITエンジニアは現在の仕事形態を続けていると近い将来破滅するのではないでしょうか。私はそう予測しています。
ではフリーランスはどうするべきか。もう残された道は一つしか無いと言っていいと思います。「企業の為ではなく、自分の為のソフトウェアを書きましょう」ということです。
アメリカのフリーランスはどうしているのか?
ここまで現在のフリーランスに向けての提案を書きましたが、海外移住に絡めて言うと、要は、収入を得るのに外部依存する部分を排除していけば、日本以外の場所だろうがどこだろうが食っていくことは可能だという事を言いたいのです。現在のように企業からの外注に頼っている働き方から脱却する必要があります。そこが海外移住への第一歩だと考えてます。
日本と比較して海外はフリーランスが多いはずです。日本と違って内製が当たり前のアメリカでのフリーランスはどうしているのでしょうか?実は海外のフリーランスの案件サイトを見ても、Web系以外の案件というのはほとんど載っていません。どうもそこから察するに、海外のフリーランスはWeb系以外はアプリケーションのデベロッパーがほとんどみたいです。
日本もアメリカのように内製が当たり前になるのであれば、現在のアメリカのフリーランスがそうである様にアプリケーション開発で食っていく事を考えるべきです。もちろんアプリケーション開発以外でも食べていく事は可能です。Web開発であれば、海外でも案件はありますので受注可能です。
海外移住するITエンジニアが外部依存しない収入を得る方法
受託開発から脱却したフリーランスのITエンジニアがどのようにして外部依存しない収入を確保するのかについて考えます。外部依存部分を減らせば海外移住しても何も問題ないでしょう。アプリケーション開発
ITエンジニアとしての本懐とも言えるアプリケーション開発がメインの収入源になると思います。ここで言うアプリケーション開発はスマホアプリに限った事ではなく、あらゆるプラットフォームでのアプリケーション開発を視野に入れておくべきです。ソフトウェアのオンライン販売のプラットフォームは各環境で用意されています。あとはどの環境でも開発できるだけの開発力が必要です。
ここで念頭に入れておくべきなのは、現在のアプリケーションのマネタイズ方法は販売から広告配信にシフトしつつあるということです。無料でアプリをリリースして、アプリ内広告でのマネタイズです。有料でアプリケーション販売するのではなく、無料で大量にばらまいて広告収入を得る方法です。オンラインで簡単にバージョンアップする事が可能な世の中では、ユーザもアップデートが当たり前だと認識しているので、有料で売り切りのアプリケーションでのマネタイズはデメリットしかありません。
ですので世の中の有料アプリケーションの大半はサブスクリプション制に移行しています。Adobe製品なんかが良い例です。ですが現在のアプリケーションの販売プラットフォームではサブスクリプションだと別の決済方法が必要になってきますので向いていません。個人開発レベルであれば無料アプリケーションに広告でマネタイズが一般的な方法になります。
有料アプリケーションやサブスクリプションモデルの場合ユーザの目は厳しくなります。ですので高機能を追求する必要があります。ですが無料アプリケーションの場合はユーザの目はそこまで厳しくありません。スマホアプリで低機能のアプリケーションが跋扈しているのを見れば皆さんなら判るはずです。一昔前のフリーウェア&シェアウェアの時代からしてみても、昔のフリーウェアの足元にも及ばない品質の無料アプリケーションが世の中に溢れています。
では高機能なアプリケーションは有料なのかというとそんなことはありません。無料のアプリケーションでも高機能で素晴らしい物が多いです。ですがそんなアプリケーションでも他の無料で低機能のアプリケーションの方が人気があるという謎の状態になっています。
なぜなのでしょうか?
ここが無料アプリケーションのマネタイズで一番重要な部分です。
・UXを上げてください。
・宣伝してください。
この2点を重視していないアプリケーションは駄目です。
エンジニアとしては納得しかねるのですが、アプリケーション利用者の大半はエンジニアではありません。「自分のためにソフトウェアを書け」とは言いましたが、利己的な独りよがりのソフトウェアは求められていません。良いソフトウェアを作ろうといろいろと考えを巡らせて多機能化してしまう傾向が日本のソフトウェア作者には多いと感じています。その常識は捨ててください。
はっきり言ってしまうと、大多数のユーザは多機能は求めていません。少機能でも素晴らしい体験を求めています。UXが素晴らしい物に仕上がっていればどんなに機能がショボくても利用者は使い続けます。もっと素晴らしいUXのアプリケーションが出てくるまでは。
そして宣伝が必要です。なにしろ同じようなアプリケーションでストアは溢れかえってますので、ある程度のユーザ数までは宣伝が必須と言っていいと思います。どのような形で宣伝するかは人それぞれです。いろんな方法がありますので試行錯誤してみてください。
この2点だけ重視していればアプリケーション開発のマネタイズはいけるはずです。
※注:ちなみにここまで書いているのは予想です。上記はいまだアプリケーションをリリースしていない私が書くべき内容ではありませんが、現在の状況をいろいろ分析した結果、恐らくそういう事だと思ってます。実際にリリースしてどうなるかはそのうちここに追記します(2020/01/07)。
Webアプリケーション開発
最初に断っておくと、はっきり言って旧来のWebアプリケーションは下火です。おそらくWebで展開するよりもスマホアプリで展開したほうが楽なのでスマホアプリが全盛になっています。ですが、スマホのアプリケーションにソーシャルな機能を付けるのであればネットワーク上にハブ的な機能が必須になります。ですので、Web上のアプリケーションという意味ではなく、Web技術を利用したWeb連携するアプリケーションという意味でWebアプリケーションの需要は高まっています。
これまでWeb連携するスマホアプリの場合、SPA+JSONサーバでWebアプリ展開して、スマホ側からはJSON呼び出しというのが多かったですが、最近はスマホアプリという名前で実際はWebアプリケーションというパターンも少なくないです。
俗に「ガワアプリ」というのですが、スマホアプリ上にwebviewを埋め込んでWebの表示をそのままアプリ側に出しているパターンです。現在のWebアプリはスマホアプリ(ガワアプリ)+Webアプリというのが標準だと思っていいでしょう。結局のところ、Webアプリで収入を得るにしてもスマホ対応というのは切っても切り離せないということです。
ではネイティブなスマホアプリと比較してWebアプリ(ガワアプリ)のメリットとデメリットを見ていきます。
メリット
- コンテンツ更新がWeb側で完結する
ネイティブアプリの場合、アプリケーション自体のアップデートが必要になります。
- Webサイト用の広告が利用できる
ネイティブアプリのASPは多くありません。普通のアフィリエイトをやるのであればWebコンテンツを表示できなければなりません(ASP側がcookieを利用しているため)
- Webサイトと違って検索エンジンに左右されない
Webアプリ単体の場合、結局Webサイトですので、集客面で検索エンジンに左右されます。マネタイズにはアプリ開発よりもSEOの方が重要だったりするので二重に苦労します。
スマホ連携していることで、スマホのアプリをインストールしたユーザを囲い込めます。
デメリット
- ネットワーク接続必須
アプリケーション内でネットワークからコンテンツを引っ張っているのでスマホアプリでありながらオフラインでは利用できません。
- Webサーバの帯域
Webサイトが貧弱なサーバ環境で運用されていると帯域不足に悩まされる可能性が大きいです。クラウド上でWebサイト運用していると料金の見積もりに悩まされるかもしれません。
- ネイティブアプリより重い
結局Webアプリのため、jsで動作することになります。ネイティブアプリの動作には勝てません。
こんな感じでWebアプリには一長一短あります。
どこに活路を見いだせるかによってネイティブアプリで実装するかWebアプリで実装するかのメリット/デメリットが変わってくると思います。
ここまでの内容だとWebアプリ作るよりもスマホアプリを作ったほうがメリットが大きそうですが、もしかしたら5Gで状況が一気に変わる可能性があります。何が主流になっていくのか予想できる程材料が出揃っていないので、現状ではネイティブアプリの方に軍配が上がりますが、Webアプリが主流になる可能性は常にあるという認識だけは持っていたほうが良いと思います。
アフィリエイト
アフィリエイトになってくると、ITエンジニアの枠とは少し違ってきていると感じられるかもしれませんが、実はそうでもありません。ITエンジニアだからこそアフィリエイトで稼ぐ事が可能な部分があるのではないかと思っています。
というのも、結局のところアフィリエイトサイトはWeb基盤上のコンテンツに広告を載せることでマネタイズしているので、コンテンツの中身以外の技術はITそのものだからです。コンテンツの中身が一番大事なのはそうなんですが、逆に言えば他のアフィリエイターとコンテンツ部分で同等であるならITエンジニアに軍配が上がると思います。
恐らくですが、普通のアフィリエイターはIT全般の技術はブラックボックスだと思ってます。ですので、技術的にありえない事を信じていたりオカルト的SEO手法によってアフィリエイトサイトを展開しています。アフィリエイト界隈は良くも悪くも普通の人がWebサイトを運営しているだけなので、基盤となるWeb技術は全くと言っていいほどの素人です。そこにITエンジニアであればつけ込む隙があると感じています。
また一般のアフィリエイター達が使用しているアフィリエイトのツール類ですが、かなり高額で販売されているようなものでも普通のエンジニアであれば自作する事ができます。当然Web系の知識やアフィリエイトの知識は必須ですが、基本的に人力で解決するのはサイトコンテンツの中身だけであって、それ以外の部分は自力のプログラミングでいくらでも効率化できますので、エンジニアで畑違いだからといってアフィリエイトに手を出さないのは勿体無いと思っています。
少し話が逸れますが、このアフィリエイトの分析基盤を自作するのはとても楽しいです。私も趣味で作っているのですが、Googleのエンジンの挙動を分析することで他のアフィリエイターの見えていない事実が見えたりする時もあります。巷のアフィリエイターの言っているオカルトなSEO対策を分析することで実際は違う要因があったりというのも判ったりします。こういう部分は実際にサイトを展開して体験しないと理解できない他のアフィリエイターとITエンジニアで一線を画していると思います。
クラウドソーシング
正直言ってしまえばオススメしません。が、元々フリーランスで働いているのであれば、最悪の場合クラウドソーシングで稼ぐという最後の手段があるという認識は持っているべきです。
Web系の案件であれば日本や海外のクラウドソーシングのサイト経由で案件を受けることができます。Web系案件なので単価は安いですが、それでも普通の生活ができるレベルの金額は稼ぐことが可能ですので、海外で他の収入源が絶たれたとしても、最悪たとえフリーWIFIでもネットが繋がってれば、稼ぐ方法を持っているという認識だけは精神衛生上あったほうが良いです。
Web系案件だと現在はPHP案件が多いです。Laravel+Vue.jsの組み合わせの案件が多い様な気がするので、最低限の知識程度は持っておいた方がいいかもしれません。
まとめ
ITエンジニアが海外でフリーランスとして働くことを考えた場合、日本式の受託開発という手法は捨てた方が良いと思います。時代の流れ的に無くなっていく可能性が高いですし、海外移住を考えていなくてもいずれは無くなっていくと思われるので、そろそろアプリケーション開発にシフトしていくべきなのではないかと考えています。そして、アプリケーション開発に完全にシフトしたら、高い税金の日本で働く意味というのはほとんど無くなるのではないか、だったら海外で暮らそう!というのが今後のフリーランスの生き方なんだと思っています。
もちろん家庭を持っている方などは簡単に海外移住なんて結論は出せないと思いますが、いずれ海外で働くのが当たり前な世の中になると思うので、どうせなら今のうちから考えておくべきなのではないかと思います。というのも、本来海外で働くという観点だとITエンジニアでフリーランスというのはもっとも相性がいいはずなのです。PCもプログラミング言語も世界共通の技術ですしね。日常会話で利用する言語は違ってもプログラミング言語は世界共通なのです。海外で最も働きやすいのはITエンジニアなのは間違いないでしょう。
次回以降は移住候補になる国について書きます。